2016年03月29日
先日、フルスピードの自主調査として、経営者と個人事業主の方を対象に「マイナス金利に関する意識調査」を実施したところ、大きく意見の分かれたものが登場しました。 その話題とは「マイナス金利の導入で自身の業界に影響がある・ない」と「マイナス金利はデフレ緩和につながる・つながらない」の2つです。
今回は、それぞれのコメントを紹介しながら、意見が分かれた理由や共通点を考察していきます。
※前回の記事はこちらから! 経営層も実感できない?「マイナス金利」に関する意識調査 ~本当の消費喚起に必要なことは~
目次
この話題は図のように、3つの傾向に分かれました。
さらに「良くも悪くも”影響がある”」と考える方のうち「良い影響」と「悪い影響」でも大きく意見が分かれています。まずは、それぞれのコメントについて見てみましょう。
良い影響は「住宅ローンと融資」 悪い影響は「貸し渋り」「手数料増加」「消費委縮」
影響があると考えた回答者は104名中54名いて、そのうち、良い影響が16名、悪い影響が38名とネガティブなコメントが倍を超える結果となりました。
「マイナス金利」が自身の業界にもたらすと考えられる良い影響は「住宅ローンがしやすくなる」「運転資金、設備投資の借り入れへの期待」で占められ、銀行融資と不動産の影響から、自身の業界にも良い影響があると考えているようです。
以下は、「自身の業界に良い影響がある」としたコメントの抜粋です。 “高額商品を販売しているのでオートローンや物品ローン金利が下がると好機につながる。(50代)” “借り入れをしたいひとの金利がさがるので設備投資などにお金が回りやすい(50代)” “住宅業界には影響がある(60代)” 一方、悪い影響を挙げた方は「かえって貸し渋りが増えそう」「銀行の手数料が増えそう」「タンス預金が増える」「消費の委縮」などマイナス金利の導入意図とは逆の方向へ、自身の業界が動く可能性を指摘しています。
以下は、悪い影響があるとコメントされた方の抜粋です。 “銀行の振込手数料まで高くなるような気がします。(60代)” “日銀が一般銀行に対して講じた施策だけれど、それで一般銀行が貸し出しを多くしたりすることはないと思う。(50代)” “マイナス金利は単独であれば効果は出るが、すでに他国でも行われているので、良い効果は難しい。(50代)”
「マイナス金利」の導入があっても自身の業界に「影響がない」と回答した方は37名。 回答者の業界は「サービス、飲食業」「セキュリティ・IT」「小規模の自営業」「教育・冠婚葬祭・医療」が多い傾向です。さらに、「良い影響がある」として挙げられていた建設業や不動産業界に携わる回答者でも、「効果があるかわからない」とコメントされる方もいました。
“セキュリティ関連で、株価や円相場などに影響を受けにくい業種だから。(40代)” “飲食業であるが、全体の景況感が良くならなければ、良くならないと感じている。(60代)” “サービス業なので影響が出るとしたら少ししてからなのでは。(40代)”
そして、自身に影響があるか「わからない」とした方は13名。 一番多かった回答が「(自身が)金融・経済の知識に明るくないため」と、やや消極的な理由によるものです。「そもそもの仕組みが把握できず、どう波及するか読めない」という回答者もおり、単語の印象からは想像がつくものの、日本銀行と各金融機関のやり取りが、どのように自身の業界や企業に影響するかイメージしづらい、という意見が多数を占めています。
もう一つ大きく意見が分かれた話題は「マイナス金利の導入がデフレ緩和に結びつくか」というものです。
この傾向のコメントを寄せたのは14名。 詳細を見ると「融資がよくなりそう」という予測がトップとなり、特に「個人事業主、中小企業への融資」を期待する回答が強く出ています。大企業だけでなく、さまざまな場面で融資しやすく、お金が回るようになれば、マイナス金利によってデフレ緩和できると期待しているようです。
以下は、コメントの抜粋です。 “銀行にお金がだぶつくだろうから。但し影響は限定的だろう。(60代)” “自分には関係ないが、ローン返済が必要な人には朗報のような気がする(40代)” “設備投資等の経済活動に多少の影響がある。(30代)”
こちらは36名の方がコメントしており、ネガティブな印象を抱く人が倍以上となりました。 コメントの内容は「実体経済は良くならないから」「その他の悪材料が多すぎる」「個人の消費喚起にはならない」の3つが横並びとなり、いずれも「金利を下げても市場にお金が回らない」可能性を指摘しています。
コメント抜粋:“日本銀行から資金を引き揚げ、国債に投資するので、市場に資金が投入されえる見込みはないのでデフレ脱却にはならないと思う。(60代)” 中には融資も緩和される期待が薄く「一部の業界だけ」「大企業だけ」救済されるという指摘も。 コメント抜粋:“大企業だけのメリットになるのでは??(40代)” 一方で、デフレ緩和の必要性そのものを指摘する回答も得られました。 コメント抜粋:“実態はデフレとは異なり物価上昇、賃金横ばいであり、何でデフレ緩和が必要なのかがうまくリンクしない。(60代)”
今回取り上げた話題は、どちらも「マイナス金利による、自身の業界への影響は薄い」「マイナス金利の導入でデフレ緩和されるとは考えにくい」という、消極的ともネガティブともいえる声がポジティブな声を上回っています。
個人的な所感としては、回答いただいた経営者の方々の視点から見た場合、自身の見える範囲では利益があると実感できず、期待よりも不安が大きくなりやすいことが要因ではないでしょうか。
特に平均賃金が低下し「個人の消費マインド」が薄くなりつつあることが多く指摘されている状況を考えると、日本銀行の打ち出したこの施策が徐々に波及することは理解できつつも、「それがどんな影響をもたらすのか見えない」「それまでに経営としての体力がもたない」という意見が強いと考えています。
すでにマイナス金利が導入されてから1か月ほど経過していますが、どのように実体経済へ影響するのかは、まだまだ時間がかかると考えられます。 なお、「マイナス金利に関する意識調査」では、このほかにもさまざまな意見が寄せられました。 次回はそれらについて、ご紹介していきたいと思います。
※この記事は、フルスピードが運営する[探す]を楽しむメディア「サチラボ」にて公開した記事を加筆修正したものです。
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